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 もはや成長という幻想を捨てよう

 今回は、見事に“いま”を言葉にされる経済学者、佐伯啓思 京都大学教授の中央公論12月号、「もはや成長という幻想を捨てよう」を紹介させてもらいます。

 「不良債権処理のために投入される政府による巨大な資本は、ますます金融市場の資本過剰を助長してしまうのであろう。(中略)金融市場は、いわば実体経済を人質にとり、政府を恫喝して金をゆすりとっているようなものであって、政府は、人質の安全確保のために、金融市場の要求する金額を提供せざるをえない。しかし、そうして手に入れた資本を養分にして、金融市場は、ほとぼりがさめたころには、またどこかでバブルを引き起こすことになる。」

 「自由や民主主義の普遍化というアメリカのプログラムの挫折は、世界秩序を主導する理念の崩壊でもあった。(中略)理念が崩壊すれば、むきだしの利益をめぐる確執が世界を動かすからである。利益の追求を背後から後押しするものは政治力と軍事力である。かくて、『利』と『力』がむき出しのままに衝突する可能性を今日の世界は生み出してしまった。」

 「かくも豊かな社会が到来すれば、人々はもはやその関心を『モノ』には向けなくなるであろう。その結果、消費は低迷し、それが資本主義の長期的停滞をもたらすだろう、というのがケインズの予想であった。『豊かさの中の停滞』である。豊かさのまっただ中でこそ、資本主義は深刻な問題を生み出す。(中略)『貧困への恐怖』と『豊さへの渇望』がもはや経済活力の源とならない。(中略)もしそうだとすれば、規制緩和や市場競争促進政策は、いっそうの生産能力過剰をもたらすだけのことであり、それに伴う有効な需要の伸長がないとすれば、よほど無理なコスト競争、価格競争をしなければ企業は存続できないであろう。これは経済活動にあまりに過度な負担を強いることになる。この負担は、まさに、ワーキングプア、フリーター、派遣労働、所得格差、労働強化、産業空洞化、地方の疲弊という形で表れているのである。(中略)今日、われわれは、消費者としてはできるだけ安いものを買おうとしている。投資家としては株で利益を得たいと思っている。しかし、そのことがまさに、市場競争を激化させ、組織的な労働を解体し、結果として、労働者としての『われわれ』は大変な目にあっているのである。」

 「人々がモノにたいする渇望を失えば、残るのは、富の表象であるにすぎない貨幣そのものへのゲーム的な関心であろう。(中略)『モノの必要』から『貨幣への欲望』という現代の経済構造が、その帰結として、ワーキングプアや所得格差といった『現代の貧困』を生み出し、また、資源や食糧の争奪戦という『希少性』を生み出すのである。『豊かさの中の貧困』といっても良いし、『豊かさゆえの貧困』といってもよかろう。」

 「ケインズが終生説いたのは、実は、グローバリズムへの警戒なのである。『頽廃的で国際的で個人主義的な資本主義が世界をかけめぐり、国内経済を破壊することこそ、彼は恐れたのである。『それは、知的でなく、美的でなく、公正ではなく、有徳ではない。われわれは、それを嫌っている。いまやそれを軽蔑し始めている』とさえ彼は書いている。この『資本の気まぐれな浮動』から、一国の経済を守らなければならない。それこそが、ケインズをして、政府による資本の管理と公共投資を唱えさせた理由なのである。そして、住宅、個人的サービス、都市の美観、地方生活のアメニティ、といった『国際商品ではないもの』をこそ重視したのである。」

 「『成長モデル』が求められているのではなく、『脱成長モデル』こそが求められているといわねばならない。生産力が過剰となった時代には、過度な競争によって一見、経済は活況を呈するように見えるものの、実際には、それは破滅への道に他ならない。このような時代に必要なことは、『競争』から『共生』への転換であり、自由市場からある程度管理された市場への転換である。」



 この文章に対して京都大学社会学教授の大澤真幸さんは、「経済成長が仮に必要ないとしても、われわれの社会はなおユートピアを、救済の希望を託すことができる夢を必要としている。」とさらなる注文を付けています。わたしたちの「ユートピア・夢」は何ですか? 私は“心地よい時間”の流れる社会だと思っています。最後に、F.D.ルーズベルトが大恐慌に登場し、第2次世界大戦終戦で死去した歴史を再認識し、改めて“平和”への決意をしなければならないと思っています。



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