田楽辻”づくり
早良区の南部地域は、他の市域と比べて、比較優位の「生業(なりわい)は明らかに、農林業」です。
その生業は、油山の西斜面に始まり背振山系に至る山林、そこから発する油山川、金屑川、室見川の流れを使い、吉武高木遺跡の“早良王国”時代から、住民の力により比較優位の「“水かおる”田園環境」を造り出してきました。
人々は、吉野ヶ里、その先の神埼櫛田神社へ至る歴史の道、早良街道(現国道263号)を築いてきました。
野芥には櫛田神社があります。約1200年前、景行天皇によるという起源。
明確に分霊したとしるされる荒江の櫛田神社など、すべての櫛田神社の起源の可能性もあります。
早良街道は古代から地域を結び、人々を結ぶ、結節機能を果たし、時間のながれのなかで歴史と文化を育み、比較優位の「人々の集いと交流による“心地よい時間”の流れる文化環境」を築いてきたのです。
これら3つの「比較優位」(農林業、田園環境、文化環境)を生かし、強化するまちづくりを考えます。
20世紀文明は大量生産、大量流通、大量消費、そして、大量廃棄により、地球環境破壊を進めてきました。
早良区南部でも、自然と歴史により培われてきた生業、文化、田園環境が、大きく変化し、消えてしまいそうになっています。
特に福岡市基本計画で“地域拠点”として位置付けられる、地下鉄野芥駅を中心とした地域は、近年、駅開業、外環整備、都市高速野芥ランプ、三瀬ループ橋完成と、著しく交通機能強化が進んでいます。
しかし、このエリアのまちづくり構想はいま、全くありません。
民俗学者宮本常一の「忘れられた日本人」に、「村の中に道が一カ所やや広くなっている所があり、そこを辻とよんでいるが、この辻を持つところは、たいてい辻寄りあいのおこなわれた村であり、非血縁的な、地縁結合が強い。」とあります。
この提案では、
「田楽辻づくり」と銘打って、
「“田(”は、水がつなぐ森と農地」、
「“楽(”は、集う文化・集う生業」、
「“辻(”は具体的なまちの形」を考えます。